第零章 プロローグ

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第零章 プロローグ

 全身が痛い。  燃え尽きそうな程熱く、至る所から血が流れる。翼には穴がいくつも空き、意識も朦朧としていた。  ─どうして…こんな事をするの?  頭の中は、ずっとこの疑問で一杯だった。  大勢の冒険者が『竜を倒した』という賞賛欲しさに、寄って集って攻撃してきた。けれど、そんな事をしても意味は無い。  なぜなら、ドラゴンスレイヤーと言う称号は、災厄を齎す竜を倒した場合のみ与えられるモノだからだ。  今までの生を人畜無害に過ごして来た彼女にとって、それは酷すぎた仕打ちだった。  何処かの誰かが彼女を邪竜にでっち上げたのか、はたまた自分が知らず知らずのうちに何かしてしまったのか…彼女には分からない。  もしかしたら、本当に悪意はないのかもしれない。けれど、生死の狭間に彷徨っていたうえに、誰も信じられないこの状況。きっと、今の自分は目に写る生き物の全てを殺してしまう。  彼女はそれを確信していた。  正しく…邪竜のようだった─ 『グォ…オォ…ッ…』  声を出そうとした。けれど、滑稽な呻き声しか出ない。  段々と、彼女の体から力が抜けて行き、瞼も重くなっていった。  ザッ、ザッ。     
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