夢の隣

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 義貞はすぐさま挙兵した。率いるのはわずか150騎。討幕を呼びかけた各地の御家人からの返事なく。新田一族ですら呼びかけには応じてこない。それでも恐れることはなかった。妖との出会いが討幕の確信を与えてくれたのだ。そして、それは鎌倉へ近づくほど強くなる。  150騎はやがて20万の軍勢へ膨れ上がった。そのまま鎌倉を攻め落とすと、北条高時を自害へと追い込んだ。先に都を落とした足利と並ぶ功績を打ち立てたのだ。あの妖の言う通り望みは叶えられた。  義貞はすぐに高時の死を探らせ、その首を求めた。鬼丸国綱によって撥ねられたのかを知りたかった。だが、処刑されたわけではない高時は自害。首を撥ねられたことで死んでだわけではなかった。さらに鬼丸国綱は行方知れず、見つかったのはその2日後。  伊豆へ逃れようとしていた高時の嫡男、邦時を捕らえ斬首し、その首と共に家臣が持ってきたのが鬼丸国綱。当然、この刀で斬首したわけではない。この刀に血は流れてない。  あの生首は高時でも邦時でもない。では誰なのかと義貞が思えば、浮かぶ姿は己の顔。もはや足利と並び立つ望みは叶えられたはず。後は妖にこの首を捧げるのみである。けれど、その妖が現れないままひと月を過ごした。
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