あやかしと人と陰陽師

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あやかしと人と陰陽師

 睦美の家での生活は知らないことばかりであっという間に日にちが過ぎた。  一週間が過ぎ、睦美の家族と交流していく中で清子は人の姿に化けられるようになった。髪は白いままだったが、獣の瞳孔のようだった目は睦美と同じような茶色になり、鋭い爪と牙は丸くなった。何よりの違いは体の成長だ。童子の様な姿が睦美と同じ高校生のように見える。 「清子ちゃんすごいね! 妖ってみんなこんなふうに溶け込むのかな」 「どうかな? 清子も会ったことないから分からないなぁ」  元々清子は約二百年を生きた妖ではあるが封印期間が半分近くあるので機会がなかった。ーーそれより清子は気になることがあった。 「ねえ、清子も学校行ってみたい。睦美から聞いてからすごく興味があるの」 「えー、友達と会えるのはいいけど勉強なんてつまらないよ? それに生徒じゃないからなぁ」 「勉強もしてみたいわ! どんなことを学んでいるの?」 「……どうするかな。流石に堂々と日中に校内歩くのはまずいよね」  睦美が悩み込んでしまった。人間の姿にもなれるようになったし行けるだろうと簡単に思っていた。 「ごめんなさい。難しいんでしょう? もういいから、また学校でのお話を聞かせて!」  睦美に気を利かせないように、残念な気持ちもあったけど明るく努めた。 「放課後なら行けるかも! 制服は私のを貸してあげる。今日は十六時には学校が終わるから一時間後に校門前に来てて、すぐに迎えに来るから!」 「……いいの?」   毎回睦美は清子のことを考えてこんなにも気持ちを汲んでくれる。優しい睦美に甘えてばかりだ。    約束の時間の五分前に言われた校門前で待つ。家に帰る人や大きな声を出して集団で走っている人たちがいる。人のいるところでは髪の毛の色が目立つらしいからもらった帽子をかぶってきた。 「清子ちゃーん! 迎えにきたよ!」  右手を振りながら睦美が走ってくるのが見える。 「睦美!」  清子も睦美に駆け寄る。まるで恋人かのように抱きしめあった。 「睦美、本当にありがとう。……清子の方がずっと長く生きているのに、あなたに甘えてばかりね」 「いーのに、私の方が人間生活の先輩だからオッケーなの!」 「なにそれ、聞いたことないけど」  なんだかおかしくて二人で笑いながら校舎に入っていった。    校内はどれも新鮮で睦美と年の変わらない子供達が同じ建物にいるのも不思議だ。 「そういえばさっき集団で叫びながら走っていたけど、あれは何だったのかな?」 「ああ、野球部かな。ほら、お父さんがテレビでよくみてるやつだよ」 「野球ってそんな事もしないといけないのね!」  清子は人の生活に降り立ってから、気になることばかりで毎日が忙しい。 「別に必ずってわけじゃないけど、多いかな」 「へー」  楽しく話していたその時だった。 「あれ? 睦美じゃん! まだ学校いたの? いつも速攻で帰ってんのに。……その子誰?」  他の生徒に話しかけられてしまった。ちらりと睦美の顔を盗み見ると顔がこわばっている。一生懸命に言い訳を考えてくれているのかな。 私が何とかしなくちゃ。  清子は一度深呼吸すると睦美の前に出る。
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