1:うさぎと隕石

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1:うさぎと隕石

 真っ白な、一面の雪の原に、うさぎがぽつんと立っていました。  さっきから、じっと空を見上げています。  うさぎの後ろには雪の中に続く穴が見えます。  穴はうさぎの家の入口です。肉食の鳥が空から見ても分からないように、地面の下に家を作るのです。  入り口はただの穴に見えますが、中はけっこう広くて、暖かで快適です。  このうさぎの家は、普通のうさぎの家とちがって、うさぎの背丈の倍くらいのとても大きな扉がついています。  普通は、うさぎの背丈と同じくらいの扉がついているものです。うさぎが出入りするだけなら、それで十分だからです。  空気はすっかり凍りつき、雪まじりの冷たい風が吹いています。空は暗くて、厚い雲に覆われています。  そのどんよりとした空の彼方で、きらりと光るものがありました。  うさぎはそれを見ると、嬉しそうに駆け出しました。  光は見る間に大きくなって、ごおごおと音と立てて近づいて来ました。  真っ赤に燃えた塊が、炎を尻尾のように吹き上げています。  炎の塊は、うさぎの家の近くの地面に、どーんと大きな音を立てて落っこちました。  熱い風が、ばりばりと辺りを薙ぎ払います。     
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