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「だとしても、冬美先生のやったことは酷いです! 花ちゃんたちがどれだけ不安だったか……」
「ええ、悪いことをしたわね」
冬美先生は、目を伏せる。私は、涙をこらえて、彼女を見つめる。すると、また彼女が口を開いた。
「ねえ? 小春先生?」
その優しい声に、私はドキリとする。
「小春先生、私のこと最低だと思った?」
「いえ、先生のことは大好きですけど、でも……。今回、先生がとった方法は、最低だし、間違ってると思います」
「そっか……」冬美先生はまた目を伏せ、悲しそうに笑った。
「じゃあ、私に憧れるのはもう止めにしなさい。ね?」
「え……?」それってどういう……?
「あなたはもう、ちゃんと自分の考えで、子供たちのことを想ってやっていける。あなたにはもう、私は必要ないわ」
もしかして先生は、花ちゃんや健太くんの為だけじゃなくて、私の為にも……? 私が、冬美先生からちゃんと卒業してやっていけるように、わざと悪役を……?
「そんなの、ずるいです……」
冬美先生は、ゆっくりと立ち上がり、缶コーヒーを片手に持ったまま、窓際へ歩いて行った。
初春の日差しを受ける彼女の顔は、今までよりもいっそう美しく思えた。
やっぱりこの人には敵わないな、と、そう思った。
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