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 彼女が窓を開ける。吹き込んできた風は、かすかに桜の匂いがした。 「気持ちいい。こういうの、『小春日和』っていうのかしら」 「……」 「もうすぐ、季節が変わって、春になるわね」    冬美先生は、そのまま私の方を振り向かずに、職員室から出ていく。  その背中を見つめながら、私は涙をこらえる。来る春に向けて、今は、泣いている場合ではなかった。  明日は、卒園式だ。
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