1/2
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

子供たちは、既に教室の椅子に座って待っていた。教室の鍵は、冬美先生が毎朝早くから開けてくれていた。 「おはようございまーす!」 「うん、みんなおはよう! じゃあ、出席とるねー」 私は、次々に子供たちの名前を呼ぶ。明日の朝と、卒園式本番。今日を含めてもあと三回しか、この子たちの名前を呼んであげられる機会はないのだ。そう考えると、涙があふれそうになる。 私はそれをぐっとこらえて、全員の名前を呼んだ。みんな、元気よく返事をしてくれた。その元気は、影が差していた私の心を、明るく照らした。 「じゃあみんな、今日は昨日までの続きをやろうねー」 先週からきく組では、最後の授業として、工作をしていた。お母さんやお父さんに感謝の気持ちを伝えるために、似顔絵を描いて、折り紙で飾りつけをする。 簡単なものではあるが、保護者も大変喜ぶだろうと思われた。子供たちも、とても一生懸命に作っている。 「はい、お道具箱から、のりと折り紙とクレヨンを出してくださーい。似顔絵を描く画用紙もね」 みんな、それぞれ自分で、準備を始める。     
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!