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 皆が幼稚園から帰っていくのを見送った後、私は職員室へ戻ってきた。まだ寒さの残る部屋に、缶コーヒーを片手に持った冬美先生だけが、座っていた。 「お疲れ様です。冬美先生」 「お疲れ様。そうだ、小春先生、これ、きく組の子のうちの誰かが落としたんじゃない?」  そう言って冬美先生が私に手渡したのは、折り紙とクレヨンだった。 「あっ! そうだと思います! きっと花ちゃんと健太くんのだ……。ありがとうございます!」 「うちの組の子が拾ってくれたのよ」 「そうだったんですか……。もう、名前をちゃんと書きなさいって言ったのに……」 「健太くんと花ちゃん、困ったんじゃない?」 「ええ、まあ……。でも、花ちゃんは勇気を出して可奈子ちゃんに自分から貸してほしいって言えましたし、健太くんも、和希くんと喧嘩しそうにはなりましたけど、ちゃんと仲直りして、自分で頼んで貸してもらってましたから。  それに、人のものを取ったりしちゃ駄目だってこと、分かってくれたと思います」 「そう。じゃあ、花ちゃんはちゃんと折り紙で飾りつけできて、健太くんもクレヨンで色が塗れたってことね」 「え? ええ……」 「なら、よかったわ……」冬美先生は、柔らかく微笑んでそう呟いた。 彼女の横顔を見ながら、私は考える。もしかして……。 いや、そんなはずはない。 でも、そうとしか考えられない……。 一瞬のうちに、色々な感情が胸の中をめぐる。 もやもやとした霧を払うためには、冬美先生に直接尋ねるよりほかに、手段はなさそうだった。 「冬美先生」 「なあに?」 「折り紙とクレヨンを盗んだの、冬美先生ですよね……?」
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