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沈黙し、目をつむって微笑む冬美先生。職員室には、古いストーブの、ごごーっ、という音だけが響いている。
そして、冬美先生はその口を開いた。
「どうしてわかったの?」
「だって、お道具箱に入れたはずの折り紙やクレヨンが教室以外に落ちてるなんて、不自然ですよ」
「まあ、それはそうよね」と、冬美先生は笑う。
「それに先生はさっき、花ちゃんが折り紙を、健太くんがクレヨンをそれぞれなくしたことを知っていました。私はどっちがどっちをなくしたかなんて言ってないのに、です」
「なるほどね。私としたことが、うっかりしてたわ」
私は続ける。
「朝、鍵を開けるのは、冬美先生の仕事です。先生は今日の朝、きく組の教室を開けるときに、花ちゃんの折り紙と健太くんのクレヨンの箱を盗んだ。そして職員室に戻り、それを自分の机かどこかに隠していた。違いますか?」
「ええ、その通りよ……」
やはり、そうだったのか……。でも……、でも……、
「でも、どうしてですか!? 何でそんなことしたんですか? 花ちゃんも健太くんも、一生懸命に似顔絵を作ってたのに……。そんなの、そんなの酷いですよ……」
冬美先生は、微笑みを崩さないまま、こう答える。
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