(5) 宝物

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「大丈夫。大学に入学してから構ってもらうから。授業だ、サークルだって忙しいだろうけど、あんまり放っておくと浮気しちゃうかもって言ってあるし」 「……しないくせに」 「しないけど」  二人で顔を見合わせてクスリと笑む。「浮気しちゃうかも」なんて気軽に言えちゃう真由ちゃんってすごい。  真由ちゃんは美人さんでもあるし、そんなことを言われたら、彼氏さんもきっと気が気じゃないだろう。 「それより、寂しいのはまどかの方でしょ?」 「え? どうして?」 「顔に書いてあるよ。この場合、まどかの「いいなぁ」は、「寂しいなぁ」ってことでしょ。こんないい天気の中、牧場で牛と戯れたり、工芸体験したり、いろんなところを見学して……開放感抜群だよね! そんな中、藤沢先輩を狙う女子は数知れず。これを機会にグッと距離を縮めて、そして告白! 狙うは彼女の座!」 「……」 「あ、寂しいなぁじゃなくて、心配だなぁの間違いだった」 「違うし!」  いや、違わないか。  確かに真由ちゃんの言うとおりだ。先輩と一緒に旅行に行ける2年生が羨ましくてたまらない。何故私は1年なんだろう? 先輩と同い年じゃないんだろう?   そんな風にもどかしく思う気持ちはあった。
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