(5) 宝物

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「オレはこいつを送っていくから無理」  え……。  呆気に取られる。それはたぶん、彼女もそうだったのだろう。何度もまばたきをしている。 「……どうして?」 「平井は逆方向だし、こいつ送っていったら前田は送れない」  いやいやいや、先輩! 彼女が聞いてるのはそこじゃない!  なんで自分を差し置いて私を送るのかってとこです!!  心の中で思い切りツッコミを入れるが、そんなものはもちろん届くはずはない。  しかし彼女はやはり強かった。私の心のツッコミを見事に言ってのけた。 「どうして私より平井さんを優先するの?」  まるで自分を優先するのが当然といったような物言いにはむかつくけれど、ある種ここまで言い切れるのはすごいと思う。まさに女王様といった感じだ。  先輩はどう答えるんだろう? ハラハラしている私をよそに、先輩は落ち着き払って答えた。
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