(5) 宝物

「い、いたっ!!　何するんですか!?」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。なんか急にまとわりつくようになって困ってたから、はっきり言ってきた」
「……」

　はっきりって、何をどんな風に言ったんだろう？　気になるけれど、そんなことはとても聞けない。
　どんな顔をしていいかわからず、モヤモヤとしている私は変な顔をしていたのかもしれない。先輩は「ごめん」と謝ってきた。

「い、いえ！　私の方こそ何か気を遣わせてしまったみたいで……」
「平井は何も悪くないし、気にする必要もない」
「……はい」

　その後、今度は先輩が何とも言えない複雑な表情を向ける。私が首を傾げていると、ここには二人だけしかいないにも拘らず、小声で言った。