(5) 宝物

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「もし何かされたり、言われたりしたら、オレに言って」 「……え?」 「あいつ、ちょっとタチが悪い。クラスでもやりたい放題だし、陰で色々あることないこと言いふらしたりしているって話を聞いたことがある。自分の思い通りにいかないと我慢できないタイプだから、もしかしたら平井に何か言ってくるかもしれない。もしくは、何かするかもしれない。それが……心配だから」  ……気の強そうな人だとは思ったけれど、そっち系なのか。  あんなに綺麗なのに、勿体無いなぁなどと他人事のように思ってしまったけれど、もしかしたら、今度は私がターゲットにされるかもしれないことに気付く。藤沢先輩はそれを気にしているのだ。  正直に言うと、やっぱり怖い。でも、何かされることを恐れて、先輩と話せなくなってしまうのは嫌だった。 「ありがとうございます、先輩」  先輩を心配させないように、笑顔を作る。 「きっと大丈夫だとは思いますけど、何かあったら報告しますね!」  たぶん、しないけど。だって、心配かけたくない。
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