(5) 宝物

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「まぁ、藤沢先輩に限ってそんなことないと思うけどさー。でも、修学旅行でくっつくカップルって多いからね」  知ってる。 「藤沢先輩狙ってる女子、わんさかいるからね」  それも知ってる。 「いつもと違う空気、いつもと違う開放感、ついほだされてOKしちゃったりなんかして」  やーめーてーーーーー!!  私はパタリと机に顔を突っ伏した。 「ごめんごめん! 冗談だって! まどか、クリスマスを先輩の家で過ごしたんでしょ? そんなのもう付き合ってるのと同じだよ。いや、家族に気に入られてるとか、もう嫁も同然だよ!」  真由ちゃん、うちのお姉ちゃんと同じこと言ってるし。  顔を伏せたまま小さく唸っていると、真由ちゃんが楽しげにツンツンと頭をつついてくる。ガオーっと襲いかかった方がいいだろうか? いや、ここは図書室だ。静かに、静かに。  顔を上げると、真由ちゃんがやっぱり楽しそうな顔をして笑っていた。
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