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1章:自分の居場所を求めて…
朝、目が覚めたら枕元が血だらけだった。枕元だけではなく、布団全体が血だらけだった…。
一体、寝ている間に、いや、寝る前に何があったのだろうか。
全くその時の記憶がない。今から少しずつ思い出していこうと思う。
*
私の名前は、来栖美緒。一九歳。
小さい頃からなりたかった、俳優という夢を目指して、両親の反対を押し切り、上京した。
現在は一人暮らしをしており、生活費は両親が負担してくれているが、俳優になるために演技を学ぶ養成所のお金は、自分で賄っている。
養成所はできるだけ料金が安くて、アルバイトと両立できるところを選んだ。
大体の人が、芸能関係を目指すと両親に告げれば、反対される。
だから、アルバイトを何個も掛け持ちして、自分で養成費のお金を賄っている人が多い。
うちの場合は両親だけならまだいい。兄妹からも猛反対された。
私には一個上の兄と、2つ下の妹がいる。兄は公務員、妹は医大生で、医者になることを目指している。
二人共、昔から頭が良くて、勉強もできた。
私はそれに比べて、勉強は人並みぐらいにしかできなかったので、よく二人と比べられた。
それが辛くて、高校卒業と同時に家を出たいと考えていた。
そんな時だった。勉強に厳しい家ではあったが、テレビを見ることは特に制限されていなかった。
私は中でもドラマを見るのが好きだった。
勉強しかやることがなくて、それ以外に特にこれといってやりたいことがなかった私には、ドラマの中の人達が輝いて見えた。
それからたくさんドラマを観た。
そして、とある男性の俳優さんのことを好きになってしまった。この感情は恋ではなく、憧れに近かった。
その俳優さんの演技の幅の広さに、私はすっかり魅了されてしまった。
私はいつしか自分が俳優になりたいと志すようになったのであった…。
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