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今から思えば、それ以外のことだってそうだ。
「相談」への「アドバイス」として、自分の理想の型にはまるよう誘導する。
(悠一は「いっつも勝手に決める」って言ってたけど、そんなことない)
『カバン? そっちのピンクのよりこっちのグレーの方が大人っぽくて似合うよ』
『コンビニでバイトするの? 由佳にはカフェとかの方が向いてると思うけどなあ』
『由佳はやっぱパンツスタイルってよりスカートってタイプだよな』
私が意識していなかっただけで、そうやって悠一に誘導された決断は、今までにいくつもあったはずだ。
ヘアスタイルに関してこれまで何も言われなかったのは、偶然にも悠一の理想と一致していたというだけのことなのだと思う。
ここ五年くらいはずっとロングだったから。
きっと、私が気に入っているとか気に入っていないとか、私に似合っているとか似合っていないとか、そんなことは悠一には重要ではなくて。
私が悠一に求められていたのは、悠一が望む通りの私でいることだけだったのだ。
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