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アルクはそういうと立ち上がり、部屋から出て行った。出て行ってすぐに、アルクと一緒に出てきたのは、黒い生き物だった。
「彼はトマ。記憶を消してくれるのは彼なんだ」
「は、はぁ…」
カヨはいきなり不安になった。なにか医療的な技術で記憶を消すとばかり思っていたのに、目の前にいるのは黒い生き物でそれが記憶を消すのだと。
「不安にならないで、彼の記憶を消す能力は最高だ」
読まれていた。アルクがカヨの表情や目の動きで読み取ったようだ。それを体感して、さらに恐ろしくなった。
「この人たちは何者か?それを知るには、まだ知り合って日が浅すぎる。
僕は、自分の素性をさらすつもりもないし、教えるつもりもないよ」
怪しく笑うアルク。年下であることは一目瞭然だが、なぜか彼はこの世界を悟ったような目をしている。子供なら抗うはずの運命でも、抗わなさそうだ。
「まぁ、信用しないならいいよ。この仕事はなかったことにしよう」
ダメだ。これ以上考えると、信用を失ってしまう。カヨはポーカーフェイスに徹した。
「いえ、よろしくお願いいたします」
「じゃぁ、明日もう一度こちらに来てくれないかな。お父さんと一緒に」
そう約束して、カヨはアルクのいる部屋を出て行った。
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