2人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
キミは俺の新しいヒト
何年かぶりに新しい奴と付き合う事になった。
喜んで良いものなのか……正直ちょっと、戸惑っている。
本当は両手を挙げて喜ぶべきかもしれないけど俺は、正直ちょっとくたびれている訳だしそもそも両手は、これ以上あがりそうもないんだ。
こんな俺でいいのか?本当に……俺でいいのか?
年の差なんて関係ない、世間はそんな風にもいうが実際問題そんな簡単な問題じゃない。
付き合うなら、最後まで。
最後まで付き合いたいというのが本音だ。お互いそういう気持ちは一致したから、こういう事になったんだからさ。
勿論人生はどこで、どう転ぶかなんて分からない。
いつどこで、どんな事……って、心配した傍から転ぶなよバカ!
どうしたんだ、おい……大丈夫か?
よかったケガはなさそうだな。びっくりしたぞもう、だから、無茶するなって俺は忠告してるのに。
あれ……何だろ、俺のほうがちょっと……不具合かな。
はは、何だかんだ言っても俺のほうが年寄りだもんな、転んだらそりゃ、ガタが来るのは俺の方だ。
何?手当て?いいっていいって。いつもの事だっ……って、そんな事はお前は知らないか。
……。
別に隠し事じゃないって。
分かった、分かった素直に言う。
だから……俺は、元気そうなお前とは釣り合わないかもしれないって。
正直に言えば、俺はお前と長く付き合う事は出来ないかもしれない。そんな事……思っててさ。
あぁああ……転んだ拍子にちょっと、歪んじまって。おいおい、直すってちょ、待て!ちょっと待て!イタタタタ!無理やりすんな止めろおい!素人なんだからヘタに弄るなっつーの!
あれ、ん?直った……?
……。
これでまた暫くお付き合いが続くでしょ、ね。
……だって?
はいはい、老骨に鞭打ってどうぞどうぞ、そこまで俺と付き合いたいのならもう、何も言いません。
でもな……俺だってこれでお前の事、心配だから色々言ってるんだからな。
いつどこで今回みたいに転んで不具合生じて、それでも無茶してお前と付き合って。
逆に怪我させるような事になるのは……やっぱりそれは、嫌だろ。
なぁ、お前……俺の話聞いてんのか?
はぁ……とことん俺を振り回すつもりだな。知らないぞ、ホントに。
ギアだってもう上手く入らないし、今時古いモーター式ライトだし、後輪の泥除けは致命的にへこんで歪んでいるし。
しかも、今さっきお前が転んだおかげでカゴがベコベコに。
みっともない姿だし。
あーそう、そうですか。そうしたらテントウムシ搭載の新しいの買うんですか。いいですねぇ、そりゃぁよかったです。
別に拗ねてるわけじゃないよ。
俺的にはだな、ポンコツな俺と付き合ったりしないで最初からそうやってちゃんとした……ギアもちゃんと入って新しい、お前に合った奴と付き合うべきだって主張してるだろ。
お情けでお付き合いされてるこっちの身にもなれよ。
……俺がスクラップになるまで付き合う……だ?
はっ、もうどうにでもなれ。
でもそうだなぁ……間違いなく俺の方が先に逝くよな。
年の差的に。
あとどれくらいお前と付き合えるだろうな?ああ、俺にもよくわからない。
雨降ってきた。
それでも……やっぱりお前はペダルをこぐのだな。元気だなホントお前。
そんな事されたら俺、劣化が激しくなるだけなんだけど。
ま、小屋の中でさび付くよりかはマシな人生になるかもしれない。
よろしくたのむよ、俺の新しいヒト。
車輪が回る限り、俺は君をどこへでも、好きな所へ連れて行くから。
終
最初のコメントを投稿しよう!