海に恋をして愛になったよくある話

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海に恋をして愛になったよくある話

 ねぇえ、あたしいつまでこうしてなきゃいけないの?  じりじり焼ける砂浜に、あたしは今日も大きなパラソルを差して夏の日差しから必死に逃れている。もちろん日焼け止めはバッチリ決めて。なるべく素肌を晒さないように、流行りの服を着るのはやめた。  そりゃ、暑いのは嫌だけど。焼けてしまうのはもっと嫌。  暑い、と文句を言えば彼は  じゃぁナミも一緒に泳げばいいだろ、と言う。  毎日毎日、よくもまぁ飽きもせず……ナミを追いかけて行くものよね。それが私ならいいのに。  彼が追いかけているのは海の波。  ヒマで仕方がないのであたしは、パラソルの影になった所で砂でお城を作ってみる事にした。けど、どっかの古い歌にあるみたいに簡単じゃない。手先は器用な方だと思っていたけど砂細工って難しいんだわ、だめ、これただの砂山。  ようやく波乗りに飽きて上がってきた彼に、あたしはタオルと清涼飲料水を差し出した。 「お、」  ありがとうと言葉をつづけるより先に手を伸ばしてきた彼に意地悪をして、あたしはタオルに包んだ一式を遠ざける。 「さて、問題です。今貴方の足もとにあるのは何?」 「は?……なんだよ……砂山?」  ですよね。  気を利かせた返答を期待したあたしがバカでした。     
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