海に恋をして愛になったよくある話

2/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 不貞腐れ、あたしは仕方なく彼にアクエリアスを渡してやる。 「なぁナミ、腹減ってねぇ?」 「動いてないので減ってませんー」 「なんだよ、だから一緒に泳ごうって誘ってるだろ?」 「いやです、あたしはアンタみたいに真っ黒になりたくないの」 「日焼け止め、塗ってるんだろ?海に浸かっちまえば……ほら、ええと……海女さんているじゃん。あれは真っ黒くないし」 「そうなの?あんた海女さんみた事あるの?知り合いにいるの?」 「そんなん、無いけど」  無いなら適当な事を言うな。 「とにかくこう、イメージ的に白いってのがあるじゃん」  イメージだけで話を進めるな。 「あれはさ、海女さんが海に潜りっぱなしだからじゃないかと思うんだよな」  説得力ゼロです。明らかに冗談を言っているのに、あたしには全く笑えない。  一人で話をして笑っていた彼は、あたしが全く無反応であるのに少し遅れて気がついて……ようやくあたしが、怒っている事を把握してくれた。 「……ごめん、」 「別に、いいわよ」  素直に謝る彼を見ると、なぜか憎たらしい事にあたしの怒りはすっと収まってしまうのだ。  謝るのが上手いのかも。どうにも、あたしの方が悪いように感じてしまう。 「あんたの波乗りに勝手についてきてるの、あたしだし」     
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!