1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
不貞腐れ、あたしは仕方なく彼にアクエリアスを渡してやる。
「なぁナミ、腹減ってねぇ?」
「動いてないので減ってませんー」
「なんだよ、だから一緒に泳ごうって誘ってるだろ?」
「いやです、あたしはアンタみたいに真っ黒になりたくないの」
「日焼け止め、塗ってるんだろ?海に浸かっちまえば……ほら、ええと……海女さんているじゃん。あれは真っ黒くないし」
「そうなの?あんた海女さんみた事あるの?知り合いにいるの?」
「そんなん、無いけど」
無いなら適当な事を言うな。
「とにかくこう、イメージ的に白いってのがあるじゃん」
イメージだけで話を進めるな。
「あれはさ、海女さんが海に潜りっぱなしだからじゃないかと思うんだよな」
説得力ゼロです。明らかに冗談を言っているのに、あたしには全く笑えない。
一人で話をして笑っていた彼は、あたしが全く無反応であるのに少し遅れて気がついて……ようやくあたしが、怒っている事を把握してくれた。
「……ごめん、」
「別に、いいわよ」
素直に謝る彼を見ると、なぜか憎たらしい事にあたしの怒りはすっと収まってしまうのだ。
謝るのが上手いのかも。どうにも、あたしの方が悪いように感じてしまう。
「あんたの波乗りに勝手についてきてるの、あたしだし」
最初のコメントを投稿しよう!