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「俺もさ、下心あって安易に振りまわしてるよな」
「下心?」
「てっきり水着姿でも拝めるのかなぁ……とか」
にやりと笑いかけられて、あたしは軽く彼の頭をたたく。
「水着なんて持ってないもん」
「えー、そうなの?」
あたし、海に近いところに住んでいたから昔嫌ってほど海で泳いでたんだ。だから、どうすると肌が日焼けしちゃうのとかよく知っている。
海が近くにあるとね、あえて海で泳ごうって気持ちがわかなくなる時があるの。
だって、海は逃げずにいつもそこにあるでしょ?
そんなわけでいつしか夏になって、海だ!泳がなきゃ!という気持ちがすっかり萎えちゃってる。大体この時期、内陸の海に無縁な地域からこぞって海に恋して多くの人が押し掛けてくるでしょ?
夏の時期の、海際の混雑も半端ないわけで……。
田舎を出て、海と遠い所で暮らし始めても海に思う気持ちは同じ。
あたし、別に海で泳がなくていいやって思ってた。
ところが彼氏が出来てみたら、この男が大の海好きで。泳げる季節になったと思ったら毎週毎月飽きもせず海を目指すの。
「あ、わかった。水着を買ってくれるって事ね!」
「ナミ、海の近くに住んでいたって言ってたじゃん」
話をはぐらかしたな、卑怯者。まぁ確かに……水着ってあんなちょっとしか肌を隠していないのに異様に高い買い物だ。
「そうよ、近くに住んでいたから昔さんざん泳いだし」
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