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 少年は、まさか人がいるとは思わなかった、とでも言うようにその声に怯えた素振りで身を震わせ、 「あ、あの……ぼ、僕……」 言葉にならない言葉を発し、少し外を気にするかのように後ろのドアを幾度となく振り返る。 「こっち、来な」  柾は何一つためらうことなく少年をカウンターの奥のドアに誘い、表の看板の電気を消す。少年はふらふらっと柾の声に導かれるようにドアの中へと入り、その場にまるで力尽きたかのようにしゃがみこむ。 「今暖かいココアいれるから、ここでちょっと待ってな」  柾が少年の頭を無造作に撫でにっこり笑うと、少年はその笑顔に安心したのか、まるで壊れたロボットのように幾度も幾度もうなづいた。  やかんを火にかけ、マグカップにココアをいれてお湯が沸くのを待っていると、再び慌ただしくドアが開き、黒いスーツに身を包んだ男が三人、まるで人が隠れていないか探るように、傍若無人に店の中を歩き回る。 「なんやあんたら。もう看板や。灯り、消えとったやろ? コーヒー飲みたいんやったらまた明日出直してこい」 「夜分申し訳ありません。人を探しているのですが、こちらに誰か来ませんでしたか?」  リーダー格の少し年配の男は柾の声に振り返り、意外に丁寧な態度を見せる。  しかし、他の二人は黙ってテーブルの下まで確認を始める。     
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