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真っ赤な血が床に流れ出してどんどん広がり、壁も天井も、すべてが赤い色に染まって行く映像が目の前に広がった瞬間、
「うわぁっ」
自分の叫び声に驚いて楓は飛び起きた。だぼだぼのパジャマは汗でぐっしょりと濡れ、さすがに気持ち悪い。
「……やな夢」
呟いて、楓はベッドに起き上がる。雀が鳴く声が窓の外から聞こえて、昨日の嵐のような天気はまるで嘘のように澄んだ青空が広がっている。まだ寝起きの頭はぼんやりとしている。ふわりと漂ってくるコーヒーの匂いに誘われるままに、パジャマのままベッドを出、寝ぼけ眼をこすりながら階段を下りる。
喫茶店のフロアに続くドアを開ければ、今日も兄の柾が優しい笑顔を見せてくれるだろう。想像して自然と楓の顔にも笑顔が浮かぶ。
「柾兄、おはよ」
勢いよくドアを開ければ、案の定、柾が優しい笑顔を向けて、
「おっ、楓、起きたんか?」
と返してくれた。
その柾の向かいには、こんな早い時間からカウンターに座り、コーヒーを飲んでる男がいる。その見知った風貌に、楓は満面の笑みを浮かべる。
「柊兄、いつ帰って来たん?」
「おはよう、楓。今朝着いたばっかりや。早く顔洗ってきぃ」
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