1人が本棚に入れています
本棚に追加
第一話
中年男で質素な服装の男、アイマックが玄関をでる。
「また、ユウジのところのニワトリがやられたってよ」
ちょうどやってきた、近所の男、アトラが言った。
「またかよ……。朝から聞きたくない話だな」
アイマックは答えた。
「そういうなよ。村の一大事なんだから」
「それはわかるけどね」
だからと言って、うれしい話ではない。
そこに、被害者であるユウジがやってきた。
「アイマックさん。ちょっと来てくれませんか。あとアトラさんも」
「どこへ行くんだい?」
アイマックは尋ねる。
「僕ん家のニワトリ小屋まで来てくれませんか? いろいろ見て欲しいのです」
「ニワトリが襲撃された痕跡を見ればいいのか?」
「そうです。お願いします」
「わかった。行こう」
木造平屋建ての小さな家のアイマックの家を後にして、ユウジとアイマックとアトラの三人が歩いていく。三人には歩き慣れている村の道だ。ため池のT字路を右に曲がり、ユウジの家の前を通り抜ける。そして、三人は、ユウジのニワトリ小屋の前にやってきた。
ニワトリ小屋の周りの地面には、ケモノの足跡が多数あった。
「これはきっとネコの足跡だな」
アイマックが言った。
「僕もそう思います」
最初のコメントを投稿しよう!