第一話

1/11
前へ
/22ページ
次へ

第一話

 中年男で質素な服装の男、アイマックが玄関をでる。 「また、ユウジのところのニワトリがやられたってよ」  ちょうどやってきた、近所の男、アトラが言った。 「またかよ……。朝から聞きたくない話だな」  アイマックは答えた。 「そういうなよ。村の一大事なんだから」 「それはわかるけどね」  だからと言って、うれしい話ではない。  そこに、被害者であるユウジがやってきた。 「アイマックさん。ちょっと来てくれませんか。あとアトラさんも」 「どこへ行くんだい?」  アイマックは尋ねる。 「僕ん家のニワトリ小屋まで来てくれませんか? いろいろ見て欲しいのです」 「ニワトリが襲撃された痕跡を見ればいいのか?」 「そうです。お願いします」 「わかった。行こう」  木造平屋建ての小さな家のアイマックの家を後にして、ユウジとアイマックとアトラの三人が歩いていく。三人には歩き慣れている村の道だ。ため池のT字路を右に曲がり、ユウジの家の前を通り抜ける。そして、三人は、ユウジのニワトリ小屋の前にやってきた。  ニワトリ小屋の周りの地面には、ケモノの足跡が多数あった。 「これはきっとネコの足跡だな」  アイマックが言った。 「僕もそう思います」     
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加