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少し意外だった。八千草さんは僕の見てる限りでは友達が多そうだ。クラスの人に限らず別のクラスの人たちとも話しているのを見かける。いわゆるクラスの中心にいる人物、という立場だと思っていた。
「そうなのか? 意外だな。てっきり友達と遊ぶ毎日を過ごすのかと思っていたよ」
「私身体弱いから、夏は学校以外ではあまり外に出ちゃいけないんだ」
「そうだ夏目くん、私に夏の世界を案内してよ」
それは7月20日で夏の音が聴こえ始める頃だった。
二章
あまりにもみんながうるさいので、ついに先生が怒った。
返事をしそびれてしまった。まあいい、学校が終わったら断ろう。面倒なのは嫌いだ。
教室の窓から外を見ると陽炎が揺れているのが見えた。ため息が出そうになる。【夏目蒼介】如何にも夏が好きそうな名前だな、と自分でも思う。当たり前だが僕が自分で考えたわけではない。親が夏が好き、僕が夏に生まれた、そんな出来事が相まってこんな名前を付けられた。半分呪っている。僕は夏が嫌いだ、暑さにやられてらしくないことをしてしまうから。
先生の長い話が終わり、学校が終わった。僕が口を開く前に話しかけられてしまった。
「そういうことだし、とりあえずメアド交換しようよ」
「今どきメールなのか?」
「うん、メールの方が好きなんだ」
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