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河井先生は、分かった分かった、って軽く笑いながら頷いて。
ほんの少しだけ睨んだ緒方さんを見てドキッとした。
あんなお顔するんだ、って。
小さなドキドキを、あたしは抑えるために深呼吸していた。
結局、レントゲン撮ってもらって、テーピングぐるぐる巻いてもらって。
「宮部さん、松葉杖使う程ではないけど、安静にはしていようね。そうそう、〝愛しの君〟には会いに来てもらうといいね」
ニコニコ顔の白髪お医者様のお言葉がチクッと刺さった。
あのですね、会いに来てもらえるならーー、
河井先生が、ハハハッという乾いた笑い声で応えた。
「先生。そうは言っても、彼女にも色々と事情あるみたいなんですよ」
「ほお?」
気のせいかもしれないけれど。
河井先生の言い方が、あたしの中で凄く意地悪く響いて胸が痛くなった。ギュッと唇を噛み締めた時。
「河井先生」
緒方さんの声が、あたしの頭の上をふわっと撫でていった。
「養護教諭さんは、生徒さんの心のケア、カウンセリングというスキルもお持ちなのでしょう。僕としては今度ゆっくりお話しを聞きたいですね」
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