第二章 父の悩みは尽きないのです

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そんな蓮の様子を笑って見ていると、ひとしきり塩を撒いて気が済んだらしい蓮がズンズンと歩み寄ってきた。 そして僕の腕を掴むと 「ハル、ちょっと…」 そう言って、住居へと続くドアに僕を押し込んだ。 思わず靴を脱ぐスペースの段差に躓いて倒れ込むと、ドアが閉まる音と同時に 「ハル…、これはどういう事なんだ?」 静かな怒りのオーラを身にまとった蓮が詰め寄る。 「どうって…。モーニングに来る常連さんで、蔦田グループの代表らしくて…。今日、いきなり店を任せたいって言われて、断ったら告白された…」 怯えながら答えると 「じゃあ、なんで告白はすぐに断らないんだよ!」 前にツンのめった状態から、身体を起こして蓮の方へと向き直すと、蓮に強く抱き締められる。 「あんな奴が好きなのか?」 不安そうに蓮の声が揺れる。 「違う!そうじゃない!」 「じゃあなんで!…なんですぐに断らなかったんだよ」 僕の言葉をかき消すように、蓮が悲痛な声を上げた。 「嫌だ…。ハルは俺だけのハルなんだ。誰にも渡さない」 身体を震わせ、蓮が縋るように抱き締める。 僕は背中に手を回し 「うん。僕は蓮だけのモノだよ」 そう頷いた。 すると蓮が驚いたように僕を見つめ 「本当に?」 と呟いた。 僕は両手で蓮の顔を挟むと 「今まで、僕が嘘を吐いた事があった?」 そう答える。 すると蓮は驚いたように目を見開き 「夢…じゃないよね?」 と言うと、蓮の頬を挟んでいる両手に蓮の手が重なる。 「ハル…。初めて会った時から、俺はハルが好きだった」 出会った頃より声は低くなってるし、僕の手に触れる手は、僕よりゴツゴツして大きい。 でも、僕もずっと…蓮が大好きだった。 確かに、最初は幼い可愛い甥っ子だったけど…。 思春期を迎えて、反抗期になって避けられてるのが辛かった。 でも、それはずっと、可愛がっていた息子に避けられてる寂しさだと言い聞かせていたんだと気付いた。 蓮に求められて拒めないのも…、分かった気がする。 僕はどうして…こうも色々な事に気付くのが遅いんだろう。 蓮の不安そうに揺れる瞳に吸い込まれるように、僕は蓮の唇にキスをした。
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