今はとなりで ―― 夫と歩く

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 嫁が1歳半の娘をあずけて職場復帰をすることになったので、次の子は3年ぐらい先になるという話だった。  私たち夫婦は彼らが結婚したときから一度も「子どもは?」と訊いたことがない。自分たちの頃は親をはじめ周りの人、そんなに親しくない人からでも「子どもは?」と訊かれたものだ。長男を産んでしばらくすると挨拶のように「次の子は?」と声をかけられた。  確かにそれが当たり前な時代だったけれど、中には不妊による辛い思いを抱えている人もあったこと、その言葉が知らぬ間に傷つけているなどと気づかず、みんなが鈍感だった。家を継いで、子孫を残していくのが子どもの役割だったのだから、仕方なかったのだろうけれど、私は身内だろうが他人だろうが「子どもは?」は言わないことにしている。  息子が結婚できると思ってもみなかったので、結婚すると聞いて正直大丈夫だろうかと思ったし、そう息子にも言った。嫁には感謝しかなく、二人が仲良くやっていってくれればいいと、それ以上は何も望んではいなかった。  息子夫婦は結婚から3年後、私たちに孫を抱かせてくれた。思いがけなく豪華で幸せ過ぎるプレゼントをもらったようだった。
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