今はとなりで ―― 夫と歩く

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△△  私たち夫婦の親は、健在というか、存在というか、4人全員がこの世にいる。  数年前、全員80代となった。義父母は15年前から、父母は30年前から二人暮らしだった。今、義父母のもとへは近くに住む夫の妹が毎日のように通ってくれている。父母のところへは私たち兄妹の中で一番近い妹夫婦が週1通ってくれ、ほかは町のさまざまな福祉にお世話になっている。  双方とも結婚60年以上のベテラン夫婦なのだが、夫婦というのは奥深いということか、なかなか難しいようで、仲良く暮らしています、とはならないのが彼らの現実である。二組の先輩老夫婦から私は何を学べばいいのかと、ため息すら出るときもある。  夫の手術、今の治療について義父母にも簡単な話はしているが、わかっているかはわからない。離れて暮らしているので夫の様子を目の当たりにすることがない。今となれば同居でなかったことが幸いだったと私は思っている。夫はいくつになろうが、彼らにとって子どもなのだから。  私たちも親だからわかる。子どもはいくつになっても子どもで、何かあれば、心配するし、いても立ってもいられない気持ちになる。目の前にいればなおさらである。  あの4人を置いて、私たちは逝くわけにはいかない。切れそうな細い糸であってもしがみつき、割れそうな薄い板の橋であっても渡りきって、私たちは彼らの先をいくことなく老人たちが踏みとどまっているこの世界に彼らより1日でも長く存在しなければならないのだ。彼らの子どもとして、難しくとも。
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