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「アイラ、シャリュトリューズ伯爵は俺と同い年だけど既婚者だ。恋心を抱いてはいけないよ?」
「分かっていますわお兄様。そうではなくて、私はただあの人のファンのようなもの。あの人の自由さに憧れていますの」
「それなら分からなくもない。ただ少し自由過ぎるから視察を、ということでしょうか?」
グラスにワインを注ぐのはジンではない別の執事だ。
ワインの管理をしているのも執事だが、下級執事のジンの仕事ではない。アルファで優秀であるものの経験年数が短いのだ。彼がうちを辞めずにいればいずれ家令に昇進するだろう。
ワイングラスを揺らしていた父に尋ねるとやはり苦笑いを浮かべた。俺の友人だから悪く言ったことはないが何も思っていないわけでもないようだ。
「あの町はこのキルシュの町に比べれば田舎ではあるがその分お前の心も休まるはずだ。期限は気にせずゆっくりして来なさい」
どういうわけか、電話で「何日いても構わないが、無用な人間を屋敷に泊める気はない」と伯爵が言ったようで付き人のいない旅となった。
人付き合いの嫌いな彼らしい。
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