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“二日に一度”そう言っていた彼の言葉を忘れずに、一日空けてまた同じ場所を訪れると、鏡に映したように先日と変わらない格好で椅子に座っている少年がいた。
ホッとした。
大きなお店が建ち並ぶこの場所ではあまり儲けにならないのではないだろうかと思っていたが、人の往来も多いので人攫いは難しいということに気が付いた。
周囲を行き交う人々は気にも留めず隣のお店へ入って行く。少年はそういう人にも声を掛けて客引きをすることもなかった。
「いらっしゃいませ」
近付くと彼の方から挨拶してきてくれた。見えていなくても俺のアルファのフェロモンを感じ取ったようだった。
「先日はありがとう。今日は一人だからゆっくりしていってもいいかな?」
「こちらこそ。ゆっくり時間を潰せる程商品はありませんが、いつまででもどうぞ。因みに種類は変わっていません。それから僕のお店では他のお店のような凝った綺麗な入れ物は扱っていません。お持ちの空の香水瓶を持って来て頂ければ中身だけお売りすることも出来ます。その場合は小瓶の代金を引きますので更にお手頃な価格になりますよ」
「そうなんだ。こういうことを聞いていいのか分からないけど、お客さんは来ているのかな?ここにある商品は品数が少ないように見えるけど」
「リピーターの方が多いんです。一度買って行かれた方が友達や恋人に褒められたと言ってまた来て下さるのですが、お客さんのいう通り僕一人で作っているので沢山は作れません。品切れを懸念して皆さん宣伝して下さらないので商売上がったりです」
困ったように眉を下げた。綺麗な声だがどこか淡々としてあまり感情が乗っていないように思っていたが、無感情でもないようだ。
そう言えば先日も舌を噛んだ時に顔を歪めていた。
「そんな風にまた早口でいると舌を噛んでしまわないかな?」
「あ・・・、人と喋る機会があまり無いのでつい興奮してこうなってしまって、」
深い溜め息を吐いて項垂れる姿がしょんぼりとしていて可愛いと思ってしまった。
容姿は幼く見えていたので少年だと思っていたが、喋る言葉はしっかりとしているからもしかしたら思っているような年齢ではないのかもしれない。
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