性癖入門講座① 晩春

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女子は読んでいた本を開いたまま、自分のお腹に置いた。 そして男子の方を見ずにこう言い放った。 「有沢君…。“キテル”って何?」 有沢と呼ばれた男子は女子の方を見た。 同時に女子も有沢の方を見る。 「海端さん。その様子だと“到来している”とか、そっちの意味では無さそうだね。」 有沢が聞くと、海端と呼ばれた女子は少し眉をしかめてコクリと頷いた。 「成程、なんでその言葉に疑問を持ったの?」 有沢は静かに聞いた。 「んーとねぇ…。」 海端は自分が何故その言葉に疑問を持ったか語り始めた。 「今日の昼休み中に友達と楽しく笑って話してたんだ。 その時に友達の一人が後ろから私に抱きついてきた。」 うんうんと有沢は相槌を打つ。 「まあ、おふざけみたいな感じで、いつもその子は抱きついてくるんだけど、 その時にクラスの男子一人がこっちを見てたんだ。」 「何見てんだよって心の中で言ったんだけど、 その時に、その男子がぼそって言ったのが聞こえたんだ。」 有沢は手を顎に添えた。 「“キテル”って。」 海端はそう言うと、有沢の方を見てニヤッと笑った。 「まぁた、そのポーズぅ…。」 有沢はハッと気がついて、顎から手を外した。 「なんか知っているんだね。有沢君。」 有沢は頷いた。     
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