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女子は読んでいた本を開いたまま、自分のお腹に置いた。
そして男子の方を見ずにこう言い放った。
「有沢君…。“キテル”って何?」
有沢と呼ばれた男子は女子の方を見た。
同時に女子も有沢の方を見る。
「海端さん。その様子だと“到来している”とか、そっちの意味では無さそうだね。」
有沢が聞くと、海端と呼ばれた女子は少し眉をしかめてコクリと頷いた。
「成程、なんでその言葉に疑問を持ったの?」
有沢は静かに聞いた。
「んーとねぇ…。」
海端は自分が何故その言葉に疑問を持ったか語り始めた。
「今日の昼休み中に友達と楽しく笑って話してたんだ。
その時に友達の一人が後ろから私に抱きついてきた。」
うんうんと有沢は相槌を打つ。
「まあ、おふざけみたいな感じで、いつもその子は抱きついてくるんだけど、
その時にクラスの男子一人がこっちを見てたんだ。」
「何見てんだよって心の中で言ったんだけど、
その時に、その男子がぼそって言ったのが聞こえたんだ。」
有沢は手を顎に添えた。
「“キテル”って。」
海端はそう言うと、有沢の方を見てニヤッと笑った。
「まぁた、そのポーズぅ…。」
有沢はハッと気がついて、顎から手を外した。
「なんか知っているんだね。有沢君。」
有沢は頷いた。
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