御陵の断薬と離脱:補遺 ――薬に頼るとき――

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御陵の断薬と離脱:補遺 ――薬に頼るとき――

 前編・後編では、御陵のメンタル闘病(?)と服薬~断薬までの経緯を自白しました。  断薬を完成した、その後日。  通院自体は、断薬後も毎月一回のペースで続けておりました。  が、減薬~断薬は主治医に相談せず、独りで断行しましたので、リボトリール・サインバルタを服用していないことをどう切り出したものか、悩みましたが……。  ところが、実際に主治医に断薬を自白すると、意外にあっさりしたもので。     主治医:ああ、それじゃあもう薬は飲んでいないんですね?   御陵:あ、はあ、まあ……   主治医:体調はどうですか?   御陵:あ、いえ、特に何も……     主治医:それじゃあ、薬は漢方薬に替えましょうか       栄養食品だと思って。    御陵:あ、お願いします    ネットで調べた限り、特にサインバルタの断薬はかなり苛烈で難しく、計画的に進めないと危険だ、とあちこちのサイトに書かれておりました。  それで御陵の主治医も、御陵の断薬を聞いたら、かなり慌てるだろうと想像していたので、正直拍子抜けでした。  そこで御陵が思ったのは、「主治医は次のどちらなのだろうか」、でした。     A:実はネットに出ているサインバルタの断薬・離脱は、     実際よりもかなり誇張されている。    B:御陵の主治医は処方薬の知識がなく、     断薬・離脱について深い理解が及んでいない。       ……御陵の実体験から想像すると、まあBの方かな、と。    実際、最初に御陵に処方されたサインバルタは21日分でした。  ところがネット情報によると、欧米ではこの手の薬品は、二週間を超えての処方はしないとか。  二週間分のみ、ということは、欧米ではたぶん減薬~断薬つまり服用の終わり方まで、考えて処方するのでしょう。  日本では、こういう依存性が高く離脱も強烈な薬が、割と気軽に処方されてしまうのも、どうなのかと思った御陵でした。    ところで後編で、こういう薬が自閉症の方に処方されることがある、と書きました。  自閉症の子の中には、「多動(じっとしていられない)」・「他害(周囲の人に暴力を振るう)」という特性を持つ子がいます。  御陵の長男も「多動」・「他害」を持っておりました。    子ども園や学校でも、じっとしている事ができず、周りの園児や児童を叩いたり噛み付いたり、ということが少なからず起きました。  こういう子を持つ親は、深刻な悩みを抱えることになります。  そして子育て支援センターや、児童精神科の医師に相談した結果、「ジプレキサ」などの薬の服用を勧められることもしばしばです。  御陵たちも、児童精神科の医師に勧められました。    ですが御陵自身は、成長途上の子供にこういう薬物を投与するのは、絶対に反対です。  理由は以下のとおり。    ・薬の服用を始める以上は、その服用期間と終期を定め、   計画的に減薬~断薬をしないと、   激しい離脱・薬物依存を誘発しかねない。   処方する児童精神科は、そこまできちんと計画を立てられるのか、   はなはだ疑問を覚える。   また、減薬~断薬に伴う離脱の苦痛に、   子供が耐えられると考えているのか。    ・成長途上の子供が脳に直接作用する薬を服用することが、   その成長にどのような影響があるのか、考慮しているのか。  ……以上は、御陵が自身の投薬~減薬~断薬の経験から感じた疑問です。    御陵自身が実際に向精神薬の処方を受けた身ですので、長男の投薬には、徹頭徹尾反対しました。 (幸い、長男は投薬することなく、「10才の壁」を越えることができました)  御陵の知る自閉症の子の中には、すでに投薬を初めていて、ある程度「多動」・「他害」が治まった子もいます。  ですが、果たしていつまで投薬を受けるのか、薬をやめた後の展望をどう考えているのか、それは分かりません。  自閉症の子たちが薬に頼るとき、それは親が周囲の状況に耐えかねて、子供を落ち着かせたいと真剣に悩んだ結果なのだと思います。  それは御陵も十分に理解できます。  ですが、子供の身体のこと(向精神薬の悪影響、離脱・断薬の苦痛)を考えたら、可能な限り服用は避けて欲しい、そう考える御陵でした。  ……以上は、あくまで御陵の経験を踏まえた私見です。 最終的に判断を下すのはご両親ですので、後悔のない、子供たちに負担のない判断を下して頂けたらと思います。 『キュウリのぬか漬けは、一旦漬けてしまったら、洗っても生には戻らない』  どなたか医師の言葉だったかと思います。  ここまで、ぬか漬けになった御陵の自白なのでした。
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