御陵の拾いもの

1/1
191人が本棚に入れています
本棚に追加
/200ページ

御陵の拾いもの

 ――モタビアン――    それがかつて、友人から御陵に与えられた称号(?)でした。   コレは一体何かといいますと、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、あるゲームの中に登場する種族の名前です。  小さな体をすっぽりと茶色のローブに包み、見えるのは赤く光る目だけ。   ゴミあさりで生計を立てる、エイリアン種族。 (モデルは、かの『スター・ウォーズ』に登場するタトゥィーンの現住種族ジャワスだと思われ)  では何故、御陵が「モタビアン」かといいますと、御陵はすぐに外から何かを拾ってくるからなのでした。  それも、母と妹も同じようにどこからか何かを拾ってくるので、もう種族として「モタビアン」だ、と。  御陵の原住地は、それはもう田舎でして。  今では考えられないほど分別の緩いゴミ捨て場には、かなり面白いものが捨てられておりました。  それで古物の好きな御陵、母、妹は、その前を通りかかるたびに、粗大ゴミを覗くクセが付いておりまして。 「何か楽しいゴミないかな」  というのが御陵の口癖になっておりました。    その他、近所の河原にも、けしからんことに不法投棄の粗大ゴミがあったりして、とにかく「何か拾ってくる」のが御陵の習性。 (実は今でも治っていない……)  で、どんなものを拾ってきたかというと……     ・昭和初期のバイク用ゴーグル:御陵    (丸ガラス製、バンドなし、ゴムのフレームはボロボロ)        ・素焼きのタコツボ:御陵    (骨壺に酷似、でも蛸壺)   ・彩色和陶器の小便器:母    (「サツキとメイの家」に似た物あり)   ・洋裁縫用のトルソー:妹    (脚部なし)   ・竿秤用の鉛の分銅:御陵    (本体なし)     ・ラッパのない木製真空管ラジオ:御陵    (動作せず)   ・ホンモノの使用済み藁人形:御陵    (顔写真・釘・針付き)    しかしながら、こういう古いゴミは、ある時期を境にパッタリと見かけなくなりました。  理由は、ゴミの分別の強化もさることながら、あるTV番組の流行が大きいようです。   その番組とは、いわゆる「鑑定モノ」。  意外な古物に思いがけない高値が付く、そんなこともあるという事実が広まったせいか、粗大ゴミ置き場から古物が姿を消しました。  モタビアン的には残念ですが、エコ的には正しいのかも。  でもやっぱりちょっと寂しい御陵でした。  ……そういえば、御陵の職場のリーダーも、「捨て猫みたいに仕事を拾ってくる」ことで有名でしたが。  ちなみに最後の藁人形は、打ち込んであった巨木から、御陵がむしり取ってきました。  どうして持ってきたのか、自分でもよく分からない……。 (もう持っていません。ある時に処分されました)  
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!