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御陵の拾いもの
――モタビアン――
それがかつて、友人から御陵に与えられた称号(?)でした。
コレは一体何かといいますと、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、あるゲームの中に登場する種族の名前です。
小さな体をすっぽりと茶色のローブに包み、見えるのは赤く光る目だけ。
ゴミあさりで生計を立てる、エイリアン種族。
(モデルは、かの『スター・ウォーズ』に登場するタトゥィーンの現住種族ジャワスだと思われ)
では何故、御陵が「モタビアン」かといいますと、御陵はすぐに外から何かを拾ってくるからなのでした。
それも、母と妹も同じようにどこからか何かを拾ってくるので、もう種族として「モタビアン」だ、と。
御陵の原住地は、それはもう田舎でして。
今では考えられないほど分別の緩いゴミ捨て場には、かなり面白いものが捨てられておりました。
それで古物の好きな御陵、母、妹は、その前を通りかかるたびに、粗大ゴミを覗くクセが付いておりまして。
「何か楽しいゴミないかな」
というのが御陵の口癖になっておりました。
その他、近所の河原にも、けしからんことに不法投棄の粗大ゴミがあったりして、とにかく「何か拾ってくる」のが御陵の習性。
(実は今でも治っていない……)
で、どんなものを拾ってきたかというと……
・昭和初期のバイク用ゴーグル:御陵
(丸ガラス製、バンドなし、ゴムのフレームはボロボロ)
・素焼きのタコツボ:御陵
(骨壺に酷似、でも蛸壺)
・彩色和陶器の小便器:母
(「サツキとメイの家」に似た物あり)
・洋裁縫用のトルソー:妹
(脚部なし)
・竿秤用の鉛の分銅:御陵
(本体なし)
・ラッパのない木製真空管ラジオ:御陵
(動作せず)
・ホンモノの使用済み藁人形:御陵
(顔写真・釘・針付き)
しかしながら、こういう古いゴミは、ある時期を境にパッタリと見かけなくなりました。
理由は、ゴミの分別の強化もさることながら、あるTV番組の流行が大きいようです。
その番組とは、いわゆる「鑑定モノ」。
意外な古物に思いがけない高値が付く、そんなこともあるという事実が広まったせいか、粗大ゴミ置き場から古物が姿を消しました。
モタビアン的には残念ですが、エコ的には正しいのかも。
でもやっぱりちょっと寂しい御陵でした。
……そういえば、御陵の職場のリーダーも、「捨て猫みたいに仕事を拾ってくる」ことで有名でしたが。
ちなみに最後の藁人形は、打ち込んであった巨木から、御陵がむしり取ってきました。
どうして持ってきたのか、自分でもよく分からない……。
(もう持っていません。ある時に処分されました)
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