御陵の欲しいもの:欲の総量

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御陵の欲しいもの:欲の総量

 先週5/25、子供たちの運動会が無事に終わり、その足で長男のモチベーションを維持するためのご褒美を買いに出ました。  購入したのは、長男が欲しい物、古いプラレール。  それ以外の物は、欲しがらなかった長男でした。  今でこそ、あまり物を欲しがらなくなった長男ですが、三年くらい前までは、それはもう大変でした。  目に付く物を片端から欲しがる勢いで。  玩食、プラレール、ぬいぐるみなどなど……  ……実際、自閉症の長男には、普通の子よりも多くの物を買い与えてきたのも、事実ではあります。  御陵の家は、老父と同居で、食事や身の回りの世話、つまりもう介護が始まっています。 (本人には自覚が全くない)  家事とくに炊事をするためには、長男の気を逸らせておくしかない。  それで、長男独りでも間を持たせられるように、何かを与えておくしかない訳です。 「物を与えすぎると、我慢のできない我儘な子になってしまう」、    などと「親」ではない(その子の人生に責任を持たない)人々は好き勝手に言います。 (そういうひとは、注文と文句は多いが、手もお金も出さない)  確かに普通の子でも、そういうことはあるでしょう。  実際、七歳くらいまでの長男は、それはもう凄かったですが。  しかし、七歳を超えたあたりから、長男は急に物を欲しがらなくなりました。  買い物に連れて行って、何か欲しい物を聞いても、  「いい物がない」とか、  「やっぱりやめる」とか、  「もうちょっと考える」とか、  一度立ち止まって、本当にそれが欲しい物かどうか、考えられるようになりました。  (これは凄い進歩です。感無量の御陵)  以前に自白したかもしれませんが、自閉症の子たちには、「十歳の壁」と云われるものがあります。  その子をきちんと療育したかどうか、その両親が努力と苦労を積み重ねてきたかどうか、その子が十歳になる頃に、結果が顕在化してきます。  その子がある程度のコミュニケーション力を持てるに至ったか、感情をコントロールできるようになったか、指示が通るようになったか。  ……長男が欲しい物を客観的に考えられるようになったのも、加齢と療育の積み重ねの結果なのだと思います。  と、ここで御陵は他の見方に気付きました。  十歳になる頃に、急に物を欲しがらなくなった長男。  ……もしかしたら、ひとが欲しがる物の総量は、決まっているのではないか? (同じことを誰か芸能人が言っていたそうですが)  もしかしたら、性欲とか食欲とか他の欲望にも、同じ事が言えるのではなかろうか?  さらに言えば、欲のピークといわゆる「モテ期」の到来とは、何か関係があるのかも。  ……ネタになるんだか、ならないんだか。  ちなみに、今の御陵には特に欲しいものがなくて。  むしろ物を減らす方にシフトしてきています。  ひところは杖マニアだったり、いろいろ買いましたので、そろそろ物欲が尽きてきたかも。  でも、血迷って性欲に直結した話(#16.)を残し始めた御陵ですので、そっちはまだ残っているのか……。  洗濯物を干し終えて、長男のご飯を作り終えた御陵は、取り留めもなく考えたのでした。
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