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それは突然に
夜空を仰いでいた。満天の星と片手には缶ビール。気持ちよくなり、ぐぐっと背伸びをしてみた。すると、十二月のひんやりとした風が身体を撫でていった。
「瞬ちゃん」
後ろから瞬を呼ぶ声がした。ベランダから部屋に戻る。
「開けるよ」
そっと木製の引戸が開くと、顔を覗かしてきたのは小柄なお婆さんだった。
「どうしました、節さん」
節は今年で七十歳。ショートヘアで真っ白な白髪頭。モンペをはき、上着にはちゃんちゃんこ。THE昭和のお婆ちゃんみたいな恰好をしている。
十年前に旦那を亡くして以来、独り暮らしをしている。そして、最近になって自宅の二階を人に貸し出し始めたのだ。
家賃は二万円。夕飯付き。
いい条件だと思った。
貯金で食いつないでる瞬は贅沢ができないからだ。だが、一つだけ不満とまではいかないが、もう少しだけプライバシーは守ってほしかった。ここで暮らし始めてからというもの、節は瞬を自分の孫のように世話を焼いくるのだ。
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