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次の日の朝、美帆は仕事に行く準備をしていた。シャワーを浴びて、長い黒髪をドライヤーで乾かし、メイクを始める。
美帆は美人だった。簡単に化粧と髪をセットし、押し入れから動きやすそうな洋服を着て、カバンを持った。外に出ると、雲がほとんどない真っ青な空が見えた。今朝はカラっとした陽気で温かい。ロングコート一枚羽織るだけで十分だった。
美帆は下町の小さな花屋に勤めていた。赤い店舗テントには「花住」と店の名前が書かれてある。
クリスマス用に、店はいつもより華やかに飾り付けがされていた。テントの際にイルミネーションライトが施され、外壁には大きなクリスマスリーフが飾られていた。
店内にも小さなツリーが置かれており、壁にはサンタやトナカイのウォールステッカーが可愛らしく貼られ、天井から吊られているガーランドにはmerryChristmasと書かれてあった。三種類の長靴やシルバーのキラキラしたパーティーモールも飾られ、誰もが楽しんで帰ってもらえそうな店内になっていた。
花もクリスマス用にいろいろ販売されている。ポインセチアという植物は、花のように見える鮮やかな赤い葉っぱを付かせ、クリスマスフラワーとも呼ばれている。それと、クリスマスローズ。バラのような白い花を咲かせる可愛らしい花。羊番の少女が、クリスマスの日に星に導かれてキリストと対面し、天使に手渡しされた花だとされている。そして、クリスマスツリーでおなじみのコニファー。手軽に置ける小型のものが売られている。
「夏菜子さん、おはようございます」
美帆はレジカウンターで開店準備をしている夏菜子にあいさつをした。
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