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雨野瞬は都心から東京都墨田区にある下町に移り住んできた。
ここ墨田区は、戦前期に浅草から墨田川を超えて移り住んできた職人や町工場が多い地域でもあり、昭和の活気と風情が残る下町だ。
しかし、そんな中に異様なものが見える。ひときわ目立つ東京スカイツリーが、背の低い建物に囲まれながらそびえ立っているのだ。なにかそこだけ近未来がやってきたようだった。
墨田区は今でこそ東京スカイツリーでメジャーな観光地になったみたいだが、それまでは昔気質な下町民が暮らす閉鎖的な場所だったらしい。
今、住んでいる家も昭和初期を思わせる二階建ての一軒家。外壁は鎧壁といって、表面を平らにせず、板を少しずつずらして張り重ねていき、それが鎧のように見えることから、そういう名がついたのだという。
それと、瓦屋根に木製の雨戸、木格子で作られたベランダ。もうそこは昭和にタイムスリップしたような場所だった。
瞬は、缶を額に押し当ててみた。ほろ酔いの火照った顔がスーッと冷えていく。ここに居れば、今までのしがらみや悩みなんかも、全部、忘れさせてくれる気がした。
また夜空を仰いだ。
星が降っていた。
キラキラと煌めく満天の星。すると、不意に顔に雫が落ちてきた。
「雨だ」
パラパラと身体を優しくさしはじめる。
その時だった、思いがけないモノも降ってきた。
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