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二日目
“問2 結んだり切ったり、細くしたり太くしたり出来るものは“
時間は限られているにもかかわらず、懐かしいな…と暫く感傷に浸ってしまった。
ここは、学生の時に通っていたキャンパスの中で一番広い講堂だ。ここで色々な分野の講義を聞いて勉強していた。
初めての土地、初めての一人暮らし、不安で胸に穴が空きそうだったあの頃。
高校3年の冬、合否を聞いてはいちいち一喜一憂し、心身共に疲れていて、やっと納得して決まったところだった。
将来の夢はある。それがいつか叶えられるならば、ここで頑張っていこうじゃないか。
「ねぇ名前なんていうの?どこ出身?なんのサークル入る?俺はさ」
入ってすぐ、話題も豊富で友達もたくさんできた。
「え、俺も一人暮らしなんよ。自炊できるかなー。」
共感できることがあるとますますほっとした。
嬉しい。家族とは離れてるけど、何とかやっていけそうだと思えた。
キャンパスライフが始まってから、イツメンというグループができた。イツメンとはいつも一緒にいるメンバーという意味らしい。LINEも交換し、同じサークルにも入った。始めはあまり深くは考えていなかったのだが、この“イツメン“が後に私を苦しめる。
「おい、お前、頭に何かとりついてるぞ。」
人混みを掻き分けながら今日の昼飯を選んでいた時に、友人がいきなりそんなことを言い出したのだ。
「何?急にびっくりした。」
「お前さぁ…危ない。怪我するかもしれないよ。」
どうやらこの人には自称霊感があるらしく、見えたり感じたりすることができるとのことだった。
信憑性はないし、戸惑いはしたものの、日々の生活を少し気をつけてみた。
スタート早々に縁起でもないことを言われ、心惑わされたことを怒るべきなのか、教えてくれたことを感謝するべきなのか…分からないまま時は過ぎた。
キャンパスライフも1ヶ月近く経とうとしていた。ある日の講堂での授業で、私は変化に気づく。
いつのまにかいたるところでイツメングループができあがっている。
最初はみんな一緒で、「頑張ろうね」と声掛け合っていた人たちもそれぞれのグループに落ち着いていた。「今日授業終わったらイツメンで遊ぼうぜ」だなんて会話も聞こえてくる。仲が深まっている。
イツメン。私のイツメンは…自称霊感と、もう一人同じサークルの人。二人とも他のグループに行くことだってよくあることだし、結局何なんだろう。
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