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「・・・・ジッ。ザザッ・・・・・。」
ピエロの顔がノイズを上げた。ヒッ、と友見は小さく漏らす。ノイズはしばらく続いた。突然、夜実が、風船に向かって歩きだす。
「ザーザー・・・ジジッ・・・・。ザーッ・・・。」
ノイズが大きくなる。やがて、夜実はピエロの真ん前までたどり着いた。そしてーーーパァンッ!と乾いた音が響く。ピエロの風船が割れたのだ。友見は夜実の隣へ歩み寄る。
「・・・プレゼントは無いみたい。」
残念そうにする様子は年相応に見える。しかし、その手にはーーーいつの間に用意したのか、マチ針があった。
二人がピエロ商店を出た時、外はまだオレンジだった。友見は空を見上げて不思議な感覚をぼんやりと受け入れていた。夜実の方は、見るからにテンションが下がっている。
「ここも違うのね。残念だわ。」
「夜実ちゃん・・・。」
「さあ、帰りましょうか。夕飯、食べ損ねちゃうわ。」
「うん。」
帰る二人の影は次第に長くなっていく。明日へ、明後日へ・・・・夜実の『やり残し』がわかるまで。
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