たそがれの会議室

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たそがれの会議室

ーーー夕方の会議室でね、神様たちが会議をするんだって。明日は誰を連れていくのか話し合うの。 夜実はまた不思議な話を友見へと聞かせていた。それは、図書館の会議室。ちょうど二人のいる二階の奥にあった。 「ほら、あの大きな扉が会議室の入り口。」 「あんなところに扉なんてあったんだ。」 話の内容よりも友見は自分の知らない場所があったことに関心がいく。 「もうすぐ夕日が差し掛かるの。神様が集まってくる合図らしいわ。」 「へぇ・・・なんだかロマンチックだね。」 「友見ちゃんは・・・・。」 言いかけて夜実は止めた。無言のまま、友見を見つめる。友見の方は手に持った本に意識が向いていた。今週入ったばかりの新刊は既にピカピカではなくなっていたが、楽しみにしていた友見には関係ない。 「そろそろね。」 「何が?」 「夕日が差し込むの。」 そうだった、と友見は顔を上げた。扉の方へ意識を集中する。二人が見つめる先で、夕日は扉を照らし出した。キラキラとオレンジ色に光る扉は特別なものに見える。非現実的な光景に友見の目は釘付けだった。 「・・・何か聞こえる。」 「え?」 夜実は耳をすましていた。夕日が差し込んだ辺りから、ぼそぼそと声が聞こえる。友見も耳をすましてみる。 「・・・・だな。」 「どう・・・・か。」 低い声で話している。誰か入ってきた気配はなかった。やがて、声が止んだ。夜実と友見は顔を見合わせる。そっと扉へ近づいた。 「もう全員揃ったか。」 「いいや、まだ来てないのがいるぞ。」 「ああ、お山のとこの・・・。」 「先に始めちまうかい?」 「それは駄目だ。あいつは気性が激しいからな。怒れば手をつけられない。」 「そいじゃ、待ってるかい。」 二人は神様の会話に夢中になっていた。キラキラとオレンジの光を浴びながら。 「ところで・・・・。」 神様達の声色が変わる。夜実は友見の腕を掴み、一歩下がった。 「あの子供達はどうするかのぅ?」 恐ろしいほど感情のない声が、いやに大きく聞こえた。友見は急に怖くなり、夜実を見る。夜実は声を出さないように、友見に後ろへ下がるよう手でサインを送った。 「我々の話を聞いてしまったからなぁ。」 「決まりを守るなら・・・ねぇ。」 「捕まえなくてはならないなぁ。」 最後の声が聞こえる時には二人は階段へと走り出していた。半分泣きそうになりながら、急いで階段を下りる。一階の自動ドアを越えるまで、友見は生きた心地がしなかった。息を整えていると、隣で夜実が呟く。 「・・・ちょっと危なかったかしら。」 「ちょっとじゃないよぅ・・・。」 「そうね。友見ちゃんはもっと危なかったわね。」 「しばらく図書館行けないかも・・・。」 そこで友見は気づいた。手にしていたはずの本が失くなっていたのだ。
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