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「本?いつ失くしたの?」
「わかんない。でも、二階で走ってる時だと思う。」
友見の言葉に夜実は考える素振りを見せた。今日取りに行くのは危険である。それは友見も承知のはずだ。
「友見ちゃん、今すぐ取りに戻るのは危ないと思わない?」
「でも・・・・。」
「明日じゃダメなの?」
「っ!・・・・。」
友見の顔が歪んだ。夜実は何故か既視感がある。友見はいつもの少し頼りない顔で、
「大丈夫。明日でも・・・・。だって二階に行くの怖いもん。」
「その方がいいと思うわ。」
二人は図書館へ背を向けた。夜実が歩き出すと、友見もそれに合わせて歩き出した。
「ねぇ、夜実ちゃん。」
「なあに?」
「明日一緒に図書館行ってくれる?」
そんなこと、当然だ。夜実はいつものように、友見の顔を見ずに答えた。
「当たり前でしょ?」
「ありがとう。」
友見の声は少し元気がない。夜実は明るく繕った。
「早く帰らないとね。もう晩御飯の時間だわ。」
「うん・・・。」
夜実にはわからなかった。友見の表情が、次第に暗くなっていることが。
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