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「なにを浮かない顔をしてんですか。」
おい、と、私のグラスを自分のグラスで小突く花ちゃん。
いつの間にか頼んでいた2杯目を、私の前でぐいっと飲む。
「またそんなハイペースで。」
「いーだろ。酒ぐらい好きに飲んだって。」
「いっつも潰れるじゃん。タクシー乗せるの私じゃん。」
「今日こそ絶対大丈夫。酔う気がしない。」
こんなこと言う時は大抵タクシーコースだ。
もう内心諦めて、ネットでタクシーの電話番号が入ったブックマークを確認する。
「スマホ禁止ー。」
「ちょっと。」
スマホの上にグラスを当てられ、操作することが出来ない。
「邪魔なんだけど。てか画面濡れる。どけて。」
「俺と話しに来てくれたんでしょ? 」
「なに? もう酔った? 」
「いや酔ってねーよ。そんな弱くねーから。」
鼻で小馬鹿にしたように笑って、おつまみに手をつけながらグラスに口をつける。
「どーっすか。」
「なにが。」
「新婚生活。」
「あーー....。」
不自由はしてない。が、少なくとも現状は、すっごくいい!結婚最高!とは言えない。
「なんかさ。」
「ん? 」
「言われたんだよ。」
「何を。」
「....あの人、YouTuberになりたいらしいんだよね。」
「.....。は?」
おつまみを口に運ぶ、花ちゃんの手が止まる。
「え? ちょっとまって。もっかい言ってくんね? 」
「それ、私も同じこと言ったから。」
「は? え、なに? 」
「だからね。なりたいらしいよ。YouTuber。」
「何言ってんの?」
「私もそう思う。」
私と夫、花ちゃんは、中学から高校までずっと一緒だった。
ただ、夫と花ちゃんはクラスも一緒にならなかったし、タイプも違うのでそんなに仲良くなかったみたい。
お互いに、「言うほど仲良くない」って言う。
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