え、ちょっと、もういっかい言って?

7/10
前へ
/54ページ
次へ
「なにを浮かない顔をしてんですか。」 おい、と、私のグラスを自分のグラスで小突く花ちゃん。 いつの間にか頼んでいた2杯目を、私の前でぐいっと飲む。 「またそんなハイペースで。」 「いーだろ。酒ぐらい好きに飲んだって。」 「いっつも潰れるじゃん。タクシー乗せるの私じゃん。」 「今日こそ絶対大丈夫。酔う気がしない。」 こんなこと言う時は大抵タクシーコースだ。 もう内心諦めて、ネットでタクシーの電話番号が入ったブックマークを確認する。 「スマホ禁止ー。」 「ちょっと。」 スマホの上にグラスを当てられ、操作することが出来ない。 「邪魔なんだけど。てか画面濡れる。どけて。」 「俺と話しに来てくれたんでしょ? 」 「なに? もう酔った? 」 「いや酔ってねーよ。そんな弱くねーから。」 鼻で小馬鹿にしたように笑って、おつまみに手をつけながらグラスに口をつける。 「どーっすか。」 「なにが。」 「新婚生活。」 「あーー....。」 不自由はしてない。が、少なくとも現状は、すっごくいい!結婚最高!とは言えない。 「なんかさ。」 「ん? 」 「言われたんだよ。」 「何を。」 「....あの人、YouTuberになりたいらしいんだよね。」 「.....。は?」 おつまみを口に運ぶ、花ちゃんの手が止まる。 「え? ちょっとまって。もっかい言ってくんね? 」 「それ、私も同じこと言ったから。」 「は? え、なに? 」 「だからね。なりたいらしいよ。YouTuber。」 「何言ってんの?」 「私もそう思う。」 私と夫、花ちゃんは、中学から高校までずっと一緒だった。 ただ、夫と花ちゃんはクラスも一緒にならなかったし、タイプも違うのでそんなに仲良くなかったみたい。 お互いに、「言うほど仲良くない」って言う。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加