12人が本棚に入れています
本棚に追加
「勝算あるの? 」
「なんとなく行ける気がするって言ってた。」
「うーわー。」
「仕事も辞めるって。」
「は? まじかよ。ほんと何考えてんだろうな。」
そう。
花ちゃんも、私と一緒で、きっちり下調べしてシュミレーションして、いけると思った時だけ実行に移すタイプだ。
「やっぱさー。そういうとこだよねー。」
「なにがだよ。」
「ほんっとさ。あの人の考え無しなとこ合わないんだ。」
「それもう根本が合わないのと同義じゃん。」
「だよねー。」
「やっぱ俺にすれば良かったのにー。」
「絶対やだわー。」
「なんでだよ。イケメンじゃん。」
「そういう自分で言うとこがやだわー。」
私が大好きな俳優さんのイケメン発言はあんなにもかっこいいと思うのに、どうしてこの人が同じことを言うとこんなにウザいと思うんだろう。顔がタイプじゃないからだろうか。
加えて、この人の「俺にすれば」発言は、もう聞き飽きた。別に他意はない。昔からずっとだ。高校くらいから、「30まで独身だったら結婚しよう」とか。ふざけて言ってきたものだ。
この人の軽率な発言のせいで、よく知りもしない先輩やら後輩やらに陰口を言われたり、嫌がらせをされることだってあった。
それなのに、そんな私の苦労も露知らず、未だに本気さなんか1ミリもない冗談ばかり言う。
「でもさ。何が嫌なわけ? 」
「え? 」
「だってさ、別に問題ないよな。お前の家の制度的に。金さえ家に入れれば、お前になんの影響もなくない? 」
「それは私も昨日考えたよ。何か嫌なんだろうって。」
答えが出なくて、考えるのは途中で辞めたけど。
「なんだろうなー。俺だったらなー。うーーん...安定しないのが嫌? 」
「でも別に家計的には関係ないし。」
「世間体? 」
「世間体...。」
何だか引っかかった気がした。
「あっ。」
「ん? 」
「世間体っていうか、あれが嫌かも。」
「どれ。」
「芸能人への近道感。」
「は? 」
最初のコメントを投稿しよう!