5話 園田海未の憂鬱

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優木先生は、昔から一緒に遊んでいた(遊ばれていた?)ので、幼い頃は穂乃果のみならず、私もお姉ちゃん、と呼んでいた。 が、高校に入った今、先生である彼女をお姉ちゃん呼びするのは、少々?いやいやとっても気がひける。 そのはずなのに、このルールを知らないアホのかは軽々しくお姉ちゃんと呼んでいるのだ。このアホは。 優木先生も、なんだかんだ言っても、結局は嬉しそうだし。 穂乃果のアホぶり、そして優木先生の甘々ぶりには、頭を抱えずにはいられない。 今もなお、キャッキャ言いながらイチャつきはじめた二人を見て、軽くため息をついていると、二人目の来客が訪れた。 「失礼します」 「あら、絢瀬さん」 「優木先生、こんにちは。園田さんを見かけませんでしたか?」 「見かけるも何も、そこにいるわよ」 流石は生徒会長と言うべきか、礼儀正しい絵里の挨拶に、感心してしまう。 ……穂乃果も見習ってほしいものだ。 「海未、体調はどう?と言っても、あまり変わらないだろうけど」 社交辞令みたいな感じでね、と絵里は笑った。 「ありがとうございます、絵里。あちらにいる人達が静かにしてくれれば、すぐにでも治ると思います」 「海未ちゃん!穂乃果はまだしも、おねえちゃんは先生なんだよ!?」 「その先生をおねえちゃんと言っているのは何処の誰ですか」 「日本の東京都秋葉原在住、高坂穂乃果です!」 「胸を張って言えることではないでしょう……?」 「あー、はいはい。落ち着きなさい、二人とも」 「「落ち着いています(るよ!)」」 「落ち着いてないじゃない……」 額に手を当てて、ため息をつく絵里。 「こらこら、生徒会長様を困らせちゃダメやで?」 絵里の背後から聞こえてくる関西弁。 「………希、いつからいたの?」 「んーと、五分前くらい?」 ヘラヘラした笑顔で言う彼女、希は絵里の友人らしい。 と言っても、私もつい先日知り合ったばかりなのだが。 「まったくもう………相変わらず神出鬼没ねぇ……」 「あら、東條さん」 「優木せんせー、お邪魔してますー」 悪い人ではないのだが、私はなんだかこの人が苦手だ。 なんか、嘘の笑い方と言うか、心から笑ってない気がする。 根はいい人のはずなんだけど……。 「うーみちゃん」 「はいっ!?」 少し考え事をしていたので、変な声が出てしまった。 「ん、なんか考え事でもしてたん?ごめんなぁー?邪魔しちゃって」 「いえ、構いません」 「相変わらず堅苦しいねぇ……」 「かたくるっ……そうでしょうか?」 「うん、なんというか、こう、親しい感じでいいのになぁ、っていっつも思うんよ」 笑顔は崩さずに、子供を諭すみたいな感じで言う。 「そう言う癖なんです」 「そーなん?素敵な癖やなぁ…」 「そうですか?」 「うん、なんかいいと思うよ、そういうやつ」 なんでやろね、と言いながら、また笑った。 なんとなく、ことりに似ているような気がした。
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