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優木先生は、昔から一緒に遊んでいた(遊ばれていた?)ので、幼い頃は穂乃果のみならず、私もお姉ちゃん、と呼んでいた。
が、高校に入った今、先生である彼女をお姉ちゃん呼びするのは、少々?いやいやとっても気がひける。
そのはずなのに、このルールを知らないアホのかは軽々しくお姉ちゃんと呼んでいるのだ。このアホは。
優木先生も、なんだかんだ言っても、結局は嬉しそうだし。
穂乃果のアホぶり、そして優木先生の甘々ぶりには、頭を抱えずにはいられない。
今もなお、キャッキャ言いながらイチャつきはじめた二人を見て、軽くため息をついていると、二人目の来客が訪れた。
「失礼します」
「あら、絢瀬さん」
「優木先生、こんにちは。園田さんを見かけませんでしたか?」
「見かけるも何も、そこにいるわよ」
流石は生徒会長と言うべきか、礼儀正しい絵里の挨拶に、感心してしまう。
……穂乃果も見習ってほしいものだ。
「海未、体調はどう?と言っても、あまり変わらないだろうけど」
社交辞令みたいな感じでね、と絵里は笑った。
「ありがとうございます、絵里。あちらにいる人達が静かにしてくれれば、すぐにでも治ると思います」
「海未ちゃん!穂乃果はまだしも、おねえちゃんは先生なんだよ!?」
「その先生をおねえちゃんと言っているのは何処の誰ですか」
「日本の東京都秋葉原在住、高坂穂乃果です!」
「胸を張って言えることではないでしょう……?」
「あー、はいはい。落ち着きなさい、二人とも」
「「落ち着いています(るよ!)」」
「落ち着いてないじゃない……」
額に手を当てて、ため息をつく絵里。
「こらこら、生徒会長様を困らせちゃダメやで?」
絵里の背後から聞こえてくる関西弁。
「………希、いつからいたの?」
「んーと、五分前くらい?」
ヘラヘラした笑顔で言う彼女、希は絵里の友人らしい。
と言っても、私もつい先日知り合ったばかりなのだが。
「まったくもう………相変わらず神出鬼没ねぇ……」
「あら、東條さん」
「優木せんせー、お邪魔してますー」
悪い人ではないのだが、私はなんだかこの人が苦手だ。
なんか、嘘の笑い方と言うか、心から笑ってない気がする。
根はいい人のはずなんだけど……。
「うーみちゃん」
「はいっ!?」
少し考え事をしていたので、変な声が出てしまった。
「ん、なんか考え事でもしてたん?ごめんなぁー?邪魔しちゃって」
「いえ、構いません」
「相変わらず堅苦しいねぇ……」
「かたくるっ……そうでしょうか?」
「うん、なんというか、こう、親しい感じでいいのになぁ、っていっつも思うんよ」
笑顔は崩さずに、子供を諭すみたいな感じで言う。
「そう言う癖なんです」
「そーなん?素敵な癖やなぁ…」
「そうですか?」
「うん、なんかいいと思うよ、そういうやつ」
なんでやろね、と言いながら、また笑った。
なんとなく、ことりに似ているような気がした。
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