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「ただいま戻りました」
と言う気も失せ、玄関を開けたら無言で自室へ向かう。
もちろん、今日はあちらに行くと聞かされていたことりは驚いて出てきた。
「海未ちゃん!?どうしたの!?」
とでも言おうとしたのだろうが、私の顔を見た瞬間に、キッチンへと戻って行った。
随分と慌てていたようだ。
顔は見ていないが、足音でわかる。
その理由を考える気にもなれず、トントンと、いつもなら心地よい包丁の音にも気付かずに階段を上っていった。
ガチャ、と自室のドアを開けたらその後はもう決まっている。
ベットへバタンキュー、というわけではなく、テレビを見る、というわけでもない。
ただただ、ソファの上でぼーっとしているだけだ。
小説の中の主人公やらなんやらの人間は、疲れたらベットへレッツゴーとかさっさと寝るぞオラァ!って感じの本が多いが、私の場合はただボケーっとしていることが多い。
ちなみに、ことりは料理と趣味で作っている服の製作だそうな。
この四日間のうちに、何点も洋服を作ってしまった彼女は、もはやなんというか、凄いという言葉ではかたづけられないというか。
ああそうだ、今度、ことりに作ってもらいたいものがあったのだ。
頼んでみよう、きっと、ことりの事だから、目を輝かせて「なになに!?」なんて可愛く聞いてくるのだろう。
そうだなぁ、とでもちょっとだけ焦らしてみようかなぁ。
そうしたら、きっと、あの白くて柔らかい?をぷくーっと膨らませるのだろう。
ツンツンとつついてやりたいなぁ。
そんなくだらない事を考えていると、ドアから来客のお知らせが。
「海未ちゃーん、入るよー?」
あの愛しい愛しい声に、思わず?を緩ませると、ガチャ、という音とともにトサカを揺らしながら、彼女が入ってきた。
「ちょっとだけど、おやつ作ってきたんだー!一緒に食べよ?」
「朝からですか?」
「いいじゃーん、付き合ってよぉ」
「しょうがないですね」
「やったぁー!」
子供のような姿に、クスリと笑いながら答える。
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