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彼女が持ってきたクッキーは、チョコチップ入りの、ちょっと甘そうなクッキーだった。
一つだけつまみあげて、口の中に放り込む。
サクサクした生地と、少しだけビターなチョコの味。
普通のチョコチップクッキーかと思いきや、口の中にほろ苦い味が広がる。
「………コーヒー?」
「ぴんぽーん!正解です!」
瞳をキラキラさせて、私の感想を待機していたことりは、嬉しそうに、にっこりと笑った。
「このレシピ生み出すの、結構頑張ったんだよー?海未ちゃんがよくコーヒー飲んでるから好きなのかな、って思ってからずーっと考えててねー」
なんて、チョコチップコーヒークッキーの誕生秘話を披露しながら足をバタバタさせる横で、私は一心不乱にそれを食べていた。
「その時、穂乃果ちゃんがーー」
一応耳に入っていたらしいことりの話の中で、穂乃果の名前が出てきて、つい喉に詰まりそうになってしまった。
「ゴホッゴホッ」
「ちょっ、大丈夫?海未ちゃん?」
「なっで、ほのっかゴホッ」
「あああ、落ち着いてー!」
ゴホゴホと咳き込む私の背中をさすりながら、穂乃果とのことを話してくれる。
「実はね、穂乃果ちゃんが私の友達の友達だったらしくて、偶然会ったの。もちろん、最初は「海未ちゃんの幼馴染さんだぁ……」みたいな感じだったんだけど、話してみたら面白くて。しかも、穂乃果ちゃんも女の子同士の恋愛してるって言うから気になっちゃって、つい……」
また強く咳き込んだ。
「ちょっ、ほんとに大丈夫!?」
「ほのかっが、れんあいっ……?」
「え、うん。なんか、ロシアのクォーターって言ってたなぁ。写真見せてもらったけど、すっごい綺麗な人だったよー?」
穂乃果の知り合いのロシアのクォーターだなんて、1人しかいらっしゃいませんね、はい。
とりあえず後で2人とも集合させて問い詰めますか。
いや、2人もいりませんね。
穂乃果1人で十分でしょう、ふふふ。
「………ふぅ、ありがとうございました、ことりさん」
「ううん、構わないけど、ね……海未ちゃん、顔が、ちょっと……いや、かなり怖いなぁって思うんだけど……」
「そうですか?いたって普通ですよ、ふ・つ・うですよ」
「そ、そっかぁ……」
ちょっと怯えているように見えるのは私の気のせいですよねー?
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