4話 父の言葉といつもの日々

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昼、父から連絡が来た。 最初に朝のことを詫びる父に、少しだけ柔らかい声で答える。 「もう気にしてません」 『そうか、良かったよ………それで、本題に入るのだが、ことりさんとお前の正式な結婚……つまり、婚約届けを出す日を決めて欲しいのだが』 「あー………分かりました、ことりにも言っておきます」 『頼んだぞ』 「ええ」 電話を切ると、ことりが顔を赤らめていた。 「……?どうかしました?」 「いや、えと……お義父さんの前だと『ことり』って言ってくれるんだね」 ああ、なんだその話か。 「ええ、それはもちろん」 「え、じゃあなんで呼んでくれないの?」 純粋に疑問に思ったように少し首を傾げて聞いてくる。 いやかわいいかよ。 「さぁ?なんででしょうね?」 ニヤリと笑いながら答えた私に、軽くポカポカと叩きながら「なんでぇ!」と怒っていることりに、反応が可愛いからですよ、なんて言えないまま、婚約届けの話を切り出す。 「父からの話なのですが……婚約届けはいつ出すのか、決めて欲しいそうです」 「あ、そっか………うーーん……真ん中バースデーの日とか?」 「……随分と懐かしいものを持ってきましたね」 小学生どころか、もう覚えてないような時のネタですよそれ。 「じゃあ調べてみよう!」 「何故」 鼻歌を歌いながらスマホで検索することり。 なんでそんなに行動力があるんですか……? 「………へぇ、6月14日……」 「もう過ぎてるじゃないですか」 今12月ですよ、ものすごく寒いです。 「じゃあ来年で…」 「遠いですよ、半年あるじゃないですか」 「………えー……」 そんな顔されても……。 「………クリスマスにでもします?」 「………………クリスマス?」 いや、怪訝な顔しないでくださいよ。 「ええ、逆にいないんじゃないですかね。クリスマス」 「………たしかに」 納得しちゃうんですか。 「………………………よし、クリスマスにしよう」 「じゃあクリスマスの夜にプロポーズしますね」 「わぁ……予告しちゃうんだね……」 「予告しちゃうんです」 「まじかぁ……」 「まじだぁ……」
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