ことうみ新婚話。4～6話

4話 父の言葉といつもの日々

その日の夜。
『もしもーし！』
よく言えば元気がいい、悪く言えばうるさい声が頭に響く。
『海未ちゃんから電話なんて珍しいねー！どうかしたー？』
句読点をまったくもって感じさせないうるさすぎる喋り方に、頭が痛くなりながらも、答える。
「………絵里と付き合い始めたと言うのは、本当ですか？」
『え"っ』
予想通りの答えに、はぁ、とため息を一つ。
「………………やはり、嘘でしたか」
『………う、ううんー、ホントダヨー？』
「誤魔化さないでください、何年一緒にいると思ってるんですか？それくらい、わかりますよ」
『………っ』
一瞬、息を飲んでいるのが分かった。
「穂乃果？」
『…ううんっ！なんでもないよっ！』
「……そうですか、まぁ、そのうち絵里にも噂は回ってくるでしょうから、早く解決しておいてください」
『……うん、そうだね』
「それと、そんなに簡単にこのような噂になるような事は言わないようにしてください」
『…………うん、ごめんね』
珍しくしおらしい穂乃果に、少しだけ違和感を感じるが、まぁ、それなりのことなんだろうと放っておくことにする。
『 』
穂乃果が、ボソッと何かつぶやいた気がした。
「え？何か言いましたか？」
『……ううん、何も言ってないよ？』
「…………そうですか、もう遅いですし寝ましょうか」
『うん、そうだね。おやすみ』
「おやすみなさい」
プツッと切れた電話の先は、なんだか真っ暗な気がした。